【実施報告】「マティス展」を鑑賞して」

Posted by on 5月 22, 2023 in 新着情報
【実施報告】「マティス展」を鑑賞して」

5月10日東京都美術館で「マティス展」が開催され、馴染みのメンバーが集まり鑑賞してきました。

柏原顧問からの解説・説明を受けたのち、会場へ入ると照明は落とされ、そこには写実風の作品が数点展示されていました。

マティスのイメージとは程遠い淡い色彩のおとなしい絵。フオーヴィズム(野獣派)と呼ばれ、写実や印象派時代には存在しえなかった画風が、どんな形で変遷していったのか、その展開が楽しみなプロローグです。

展示は7つの章に分かれ、マティスの生涯が展示されています。

第1章は、作品「豪奢、静寂、逸楽」。この時代に流行った点描画が描かれ、その色彩とフォルムは自由奔放、まさにフオーヴィズムの予感を漂わせています。
第2章は、大一次大戦の不安もあり暗いトーンの作品が多く見受けられました。「コルウールのフランスの窓」は、墓場を覗いている様な暗い作品です。生涯彼の手元に置かれ、公開されたのは死後12年後であったとのこと。
第3章は、女性の背中の彫刻。4段階で背中の形状を変化させ、彼の思う形状に至る過程を表現していました。
第4章で描かれた「赤いキュロットのオダリスク」では、平面的な画面に寛ぎながら気だるい雰囲気のオダリスク(ハーレムの女奴隷)が描かれ、マティスらしさが出ていました。植民地主義と女性蔑視で非難される時代にありながらも、この絵は作品としての価値が認められ、史上はじめてフランス政府に買い上げられたものです。
第5章は「広がりと実験」。腕を組み、うたた寝している裸身の女性の肘をしなやかに長く描き、夢の深みに導かれる様です。構、色彩はマティス独特の表現で、彼自身の夢がこの画面で表わされているように感じられました。
第6章「ニースからヴァンス」では、画面が鮮やかな赤一色で埋め尽くされた壁と床は境目のない一体の2次元の世界。そしてその壁を引き裂く黒い線、配置されているテーブルや机は3次元の表現。左右対に配された花や動物とあいまって不思議な空間を生み出しています。見る人の心を楽しくさせるこの作品こそ、マティスの最高傑作ではないでしょうか。
第7章「ヴァンス・ロザリオ礼拝堂」は、色紙を自在に切り抜いて形を作り上げた作品。形と色を同時に決めることのできる画材で、様々な表現を可能にし、見事に礼拝堂を装飾しています。

マティスの作品は人々の心を浮き立たせ、幸せな気分にさせる力を持ち、現代美術に多くの影響を与えました。モダンアートの原点の一つとなったとも言われています。ウクライナやコロナで滅入りがちな気分を、マティスの絵画で癒された1日でした。

小清水富江(1971年 文)記